民芸みやぎ

宮城県民藝協会からの折々の便り
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第138回日本民藝夏期学校 倉敷会場の報告−3日目−

日本民藝夏期学校 倉敷会場
2011年9月2日(金)〜4日(日)



3日目 調査報告「岡山県の手仕事」  
                   手仕事の調査委員会 委員長 三宅登志夫氏
                             村岡知子氏
     自由時間(美観地区の町並み・伝統的建造物の見学など)
     閉校式
                                     



岡山県民藝協会が創立60年を迎えた2006年を機に、
手仕事の現状調査委員会が発足。
民藝に関係なく、岡山県内の手仕事全般について
3年がかりで調査された中間報告が
『岡山県の手仕事2006〜2009』として発刊されました。


いくつかの事例が紹介された中の
写真は、百蓋(びゃっかい)と呼ばれる切り紙です。

備中神楽の神楽場に飾られるものだそうで、
鳥居や日の出、鯛などが切り抜かれています。


そこで思い出したのが、宮城県気仙沼に伝わる「切紙(きりこ)」です。
新年に神棚に飾るもので、鯛や末広が切り抜かれ、
南三陸地域では宝船などを切り抜くこともあります。


似通った文化も、興味深いところですね。



 



台風でプログラムが変更になり、
自由時間ができたので、駆け足で大原美術館へ。


威風堂々たる建物の中には、
モネの「睡蓮」、セガンティーニの「アルプスの真昼」と
ずーっと眺めていたくなる作品の数々。


つねづね海外の美術館めぐりに行きたいと思っていましたが
じっくり時間をかけて大原美術館を見るのも
かえって贅沢な時間が過ごせそうです。





夏期学校の終わりに、
参加者の名札ホルダーを回収するために使われていた箕(み)。

わが家では箕を、お風呂の脱衣かごとして使っていますが、
こんな使い方もあると気づかされます。


3回にわたって紹介してきた夏期学校ですが、
ここに紹介できなかった、町屋での懇親会。

ままかりの酢漬け、どろ海老の唐揚げなどなど、
ごちそうもたくさんいただきました。


同窓会のような顔ぶれで、久々の一献。
全国から集まられた方々との、新たな出会いなど、
心地よい充実感に包まれる夏期学校となりました。


この夏期学校は、民藝協会員だけでなく、一般の方々も参加できます。
来年は青森でも行われるので、ぜひご参加ください。
http://nihon-mingeikyoukai.jp/society/summer.html







***見つけた!倉敷の見どころ***

倉敷には、さまざまな見どころがありますが
夏期学校がはじまる前に立ち寄ったのが
美観地区にある「日本郷土玩具館」です。

和雑貨などが並ぶお店に入ると
こぢんまりとして見える倉の入り口に、看板が。

それが、奥まで郷土玩具。
さらに中庭を抜けていくと、もう一棟の1、2階までずっと続きます。
連なる米倉を利用したのだそう。

江戸から昭和にかけて全国でつくられた
玩具とおもちゃ3万点があり、
そのうち約5000点を展示しているとのこと。

全国の雛人形、仙台の松川だるま、お面、
福島の地元でも、なかなか見る機会のない久之浜張子まで。

大原美術館に、日本郷土玩具館に、
倉敷にはじっくり時間をかけて見たいところが、たくさん。
また行きたくなる、倉敷です。











| 活動−2011夏期学校 倉敷会場 | 12:02 | comments(0) | trackbacks(0) |
第138回日本民藝夏期学校 倉敷会場の報告−2日目−

日本民藝夏期学校 倉敷会場
2011年9月2日(金)〜4日(日)



2日目 講義 「郷原漆器・備中漆の復興」 
             講師 高山雅之氏(郷原漆器生産振興会会長)

         講義 「民藝とくらし」      
             講師 金光 章氏 (日本民藝協会会長)
          講義 「倉敷ガラス」       
             講師 小谷眞三氏(倉敷ガラス創始者)
                    (※台風のため、倉敷ガラスと備中和紙の工房見学が座学に変更になりました。)
          鼎談 「仕事と暮らし」         
                           杉山享司氏(日本民藝館 学芸部長)
                  柴田雅章氏(日本民藝館展審査員、国画会会員)
                  武内真木氏(倉敷堤窯、岡山県民藝協会副会長)

        交流会(自由参加) 倉敷町屋トラストにて




郷原漆器の工程や型がわかる見本に
ふれることで理解が深まります。 

「郷原漆器・備中漆の復興」の講義で
実は、郷原漆器のことをはじめて知りました。


郷原漆器は、600年もの間、
郷原(ごうばら)集落で普段づかいされていたもの。

戦後の1945 年あたりに途絶えてしまったけれど
1989年から復活に取り組み、
2006年には岡山県で初めて民俗技術として
「岡山県指定重要無形民俗文化財」に指定されたとのこと。

その立役者となった高山雅之さんによる講演がありました。
             
地元の古老の方々に漆器生産の経験や販売ルートを聞き、
近隣県の古道具屋をめぐり、かつての郷原漆器を集め、
復活にかけた熱意。

それにも頭が下がりますが、
たぶん参加者の多くを驚かせたのは
80代の高山さんによる、パワーポイントを駆使しての説明でした。
                         
岡山県民藝協会の70〜80代の講師の方々は
みなさんパワーポイントをご使用。
その姿勢、刺激になります。
   
                          



日本民藝協会会長の金光さんによる講義「民藝とくらし」。


民藝には、身近なものに美を見いだす「美的な視点」と
その背景にある「宗教哲学的な視点」があり、
宗教哲学を語られるのが金光さんだと、私は思っています。


民藝のもととなっているのが仏教思想であり、
深めることで人間形成につながっていくという考えを
金光さんもパワーポイントを使われながらお話に。


もっと詳しい内容は、
金光さんの著書『民藝を楽しむ』と『民藝とくらしき』をご参照ください。
金光さんが共感された
阿満利麿さん著書『柳宗悦 美の菩薩』も、どうぞご参考に。


 



楽しみにしていたのが
倉敷ガラスの小谷眞三さんの工房での実演でした。
ですが、台風のため残念ながら中止となり講演に。


前日は、岡山県でもっとも権威ある「三木記念賞」の授与式に出席され
夏期学校の懇親会では、受賞のスピーチをされた小谷さん。
実はその席で講演の打診をされ、
翌日の午後には、1時間半のご講演。
しっかり笑いもとられる、すばらしい内容でした。


やはり語られるのは、小谷さんを導かれた
倉敷民藝館の初代館長、外村吉之介さんから繰り返し言われた
         健康で
         無駄がなく
         まじめで
         いばらない。
 
そして、小谷さんが実感されているのが、             
子どものときに良いものに触れることの大切さ。
                       
この講演をうかがった私たち一人ひとりが、
心にとめておきたいことでもあります。



 



当初の予定が変わったにも関わらず
急きょ用意されたお昼のお弁当は
倉敷名物の「祭り寿司」。


そして、おやつは銘菓「瓊乃柚(たまのゆ)」です。
                  
艶干し錦玉のようなものかと思ったら
もっとしっかりした口あたりで
ざらめのような食感のする
柚子が香る寒天でした。


 


左より、武内さん、柴田さん、杉山さん
 
鼎談「仕事と暮らし」       
       杉山享司氏(日本民藝館 学芸部長)
       柴田雅章氏(日本民藝館展審査員、国画会会員)
       武内真木氏(倉敷堤窯、岡山県民藝協会副会長)
  
日本民藝館の学芸部長、杉山さんと
丹波篠山でスリップウエアの技法を生かして作陶する、つくり手の柴田雅章さん
父の晴二郎さんが開いた窯を継いだスリップ技法を生かす倉敷のつくり手、武内真木さん
による鼎談です。


柴田さんの
「ものは単なるものでなく、毎日ともに暮らしていると響き合う」
「暮らす環境も大切で、そこで呼吸して、眺めて、自然から与えられるものが、
 いつか手を通して出てくる」

会場からの質問に対しては、
「ものづくりをする人間にとって、大きいものが売れないのはつらい。
 小さいものばかりだと、仕事が小さくなる。
 大きいものをつくる合間に、小さいものをつくると
 パワーがこもっていいのだが」


つくり手としての実感がこもった言葉は、
小さいものを求めがちなつかい手の一人として
あらためて考えさせられました。


杉山さんと柴田さんのおふたりは
柳宗悦のもとで働いた鈴木繁男さんから直接
展示作業を学ぶ機会のあった方。


たしかに展示によって、印象は格段に違います。
デザインが重視される昨今は、特に。
どのように眼の力を鍛えるかは
「民藝館は“美の道場”」という、杉山さんのひと言に集約されていました。


武内真木さんは、いつもほんわかした笑顔で
夏期学校の準備や案内、参加者の荷物運びと、労をいとわない方。
つくり手であり、岡山県民藝協会の副会長でもあります。


鼎談で、ただただ謙虚な言葉しか出てこない真木さんに、
公開講座の講師を務めた松井健先生が、思わずフォロー。

「偉大な父親がいた子どもとしては、
 なかなか言葉が出てこないと思います。
 ご存じない方もおられると思うので紹介しますが
 真木さんのお父さんは、柳宗悦が認めた武内晴二郎さん。
 戦争で左腕を失った後も焼き物を続けた。
 縞(しま)の迫力がすごい」


気迫のこもった父、晴二郎さんの作風を知る人は
きっと家庭でも気の荒い面があったのではと想像してしまいがちですが
真木さんからは
「家族でお弁当をもってサイクリングにでかけるような、
 家庭的な人でした。
 たいていの遊びは一緒にしましたが
 そういえば、キャッチボールはしたことがなかった。
 よく腕がないと話題にされますが
 自分が生まれたときからそうだったので、
 腕がないことを意識したことはなかったんです」


過去と現在をすっと近づける、こんなひと言。
歴史としての歩みを振り返るだけでなく
実在した人の息づかいを感じられるのも
夏期学校のよさです。


会場では、焼きもの、吹きガラス、倉敷ノッティング、織物、
備中和紙、金工、木工、漆器、花むしろ、倉敷緞通、蒲細工、手まりなど、
地元のつくり手による即売会も開催。
つくり手の方とやりとりしながら買い求められる、楽しいひとときでした。









| 活動−2011夏期学校 倉敷会場 | 13:02 | comments(0) | trackbacks(0) |
第138回日本民藝夏期学校 倉敷会場の報告−1日目−

日本民藝夏期学校 倉敷会場
2011年9月2日(金)〜4日(日)



1日目 公開講座 「民藝の未来形―試論と提案」 
                 講師 松井 健氏(東京大学 東洋文化研究所 教授)

          大原美術館 工芸館の解説
                        〃      見学
         
      倉敷民藝館の見学
          
     懇親会(花餅の実演 倉敷アイビースクエアにて)   



夏の楽しみといえば、夏期学校です。

ふだん宮城県民芸協会の活動は、ゆるゆるとしていますが、
日本民藝協会による合宿形式の夏期学校だけは別。
朝から夜まで講義や工房見学、実演など、
しっかり学生気分を味わえます。


毎年、全国の3カ所で行われ、その年ごとに開催地がかわります。
今回は、倉敷会場に参加しました。




第138回日本民藝夏期学校、倉敷会場のテーマは
「古シ泉ハ 新シ水ハ」。

柳宗悦の『心偈(こころうた)』にあるこの言葉は、
古い泉ではあっても、湧きでる水はいつでも新しい、
本当に値打ちのあるものは、古くても新しいという意味です。

備中和紙で手綴じされたプログラムも、
大事にとっておきたくなります。




夏期学校の参加者117名と、公開講座の聴講者を前に
日本民藝協会の会長であり
倉敷会場の校長でもある金光 章さんから、ごあいさつ。

思いもよらぬ台風直撃で
天候状態を見極めながらプログラムを見直していく
主催される方々のご苦労の多い夏期学校となりました。

写真は、金光さんと
岡山県民藝協会の方が活けられた、百日紅(さるすべり)の花たち。




公開講座は、
民藝協会の講演会ではおなじみの松井健先生です。


東京大学東洋文化研究所の教授である先生のお話は、
「民藝の未来形―試論と提案」。


ちょっと難しそうなテーマではありますが、
 「民藝が、若い人にとって魅力的で活力になるように
くつろげる暮らしへの提言」をと
柳宗悦の意図したこと、
現代の古道具屋や雑貨屋の傾向、
ご自身のライフスタイルにおける民藝の楽しみまで。
ノリのよい話術と知識と実例による、楽しめる講座です。




公開講座の後は、大原美術館の工芸館の見学。
この中には、濱田庄司、河井寛次郎、富本憲吉、芹沢げ陲覆匹
作品やコレクションが。
さまざまな作風にふれるうちに、自分の好みに気づかされる瞬間があります。





大原美術館から歩いてすぐの倉敷民藝館も見学。
日本の手仕事だけでなく、海外の手仕事のものも多くあります。
倉敷ガラスに影響を与えたのかなと思われるものも、いくつか。





懇親会では、岡山県妹尾(せのお)地区に伝わる花餅の実演。
花餅とは、日蓮上人の命日に際した行事に供える飾り餅のこと。
伝統を受け継ぐ妹尾地区のご年配の方々が、実演してくださいました。



流れる水や蝶、鶴、亀などもあるようですが
今回つくったのは、この形の中から好きなもの。




本来は、それぞれの家で女性がつくったようですが
気にせず男性陣も体験。


土地の風習では、
お供えした後の花餅は、雑煮やぜんさい、焼いて砂糖醤油につけていただくとのこと。
「揚げてもおいしいですよ」と金光さんの奥さまに教わったので
近々揚げていただくつもりです。


花餅については
柳宗悦も次のように、よんでいます。

     花餅の偈(うた)   
              
               之ナン 花ヨリモ花
               心モ花ト 開キマセ
                ワレモ 花トナリタヤ
                誰ナルヤ 園守
                シボムナキ 花トヤ
                ナコボチソ 心ノ花




倉敷民藝館の初代館長、外村吉之介さんの著書『少年民藝館』にも
とてもわかりやすく紹介されているので、ご覧ください。









| 活動−2011夏期学校 倉敷会場 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
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